2010年 ベトナムくるま事情

交差点を埋め尽くすバイクの洪水。( ホーチミン市内にて)

TV番組などで承知はしていたが、この目で見るベトナム名物のバイクの洪水には恐れ入った。

プロローグ・車の場合

ベトナムの自動車製造メーカーは11社あるが、乗用車シェアは38%近くがトヨタ・ベトナム、17%がGMデウ・ベトナム、10%がフォード・ベトナム、9%がホンダ・ベトナムとなっている。(2008年データ) しかし、普及はそれほど進んでいない。乗用車が普及しない理由は・・・
1.ベトナム国民の給与水準は月80ドル程度で、まだまだ車は高嶺の花(15万~100万$)である。
2.しかも輸入関税が83%、国産車であっても消費税が50%もかけられており、その税率がある日突然変わったりする。
3.ベトナムの人口8600万人に対し、バイクの数は3000万台。町中ではバイクが邪魔で車が自由に走れないし、駐車場も無い。
4.高速道路など道路インフラが未整備で車のメリットが充分活用できない。などなど・・・・
1992年にメコン自動車(越-韓-日の合弁会社)という会社から国産乗用車第1号が政府幹部も出席して華々しくラインオフされたが、それほどの大きなマーケットは見込めないのに政治的思惑から、1993年から1996年にかけて、次々と海外メーカーに門戸を開放し、気がつけば11社が 限られたわずかなパイを争うじり貧な状態となる。そんな状況にもかかわらずベトナム政府は国産化率の向上や、国民車構想(1500ccのミニバン)などと勝手なことをぶちあげ、乗用車シェアトップのトヨタ・ベトナムでさえ、最悪撤退も考えていると明らかにしている。

プロローグ・バイクの場合

これに対してバイクはドイモイ政策の進展に伴い1990年代から急速に普及をはじめ、2001年には年間200万台、今年度は300万台の国内生産が見込まれている。ちなみに1998年から完成車の輸入は禁止となっている。
バイク製造メーカーは外国系企業7社、国内企業35社!ほどあり一番人気はホンダで、ホンダの名前はバイクの代名詞ともなっている。つまりスズキのホンダ、ヤマハのホンダ、カワサキのホンダという感じ。国内企業はだいたい中国製の部品を輸入し、国内で組み立てて販売している。
2000年に日本車の1/4~1/3の価格で大量に出回った中国製バイクは、ベトナムの地方を中心に売れまくり、中国ショックという言葉を残した。しかし、安かろう悪かろうのたとえ通り、故障が相次ぎ、日本メーカーも価格を下げたこともあり、現在は50/50の状態だという。

ホーチミン市・タンソニャット空港から市内に至る道路の状況。車とバイクの洪水を横断しようとする者もいる。



市内の信号機はこんな形。待ち時間が表示されるのは良いアイデアだ。



赤信号で停車するバイク軍団。



信号が変わると、わっと飛び出すバイク軍団、まさにバッファロー・ダッシュ。



狭い道はこんな感じ。前方の黄色いタクシーは三菱製。



ホーチミン市、朝の通勤ラッシュ1



通勤ラッシュ2



トヨタ・ベトナムの代表車、イノーバ。日本では見ない車種。



ベトナムではバイクとバスが庶民の足。写真の路線バスは韓国・ヒュンダイ製。



韓国キア自動車製の軽車(キョンシャ) キア・ピカント。



通勤ラッシュ3 月光仮面がいっぱい。



裏通りもこの状況。おっと、アオザイ姿のお姉さんが・・・。なお、バスはこの後、前方に停車しているバンを抜く。



珍しく踏切で一時停止するバイクを目撃。一応これがルールなのだろうが、他車は全く止まらない。そもそも列車がほとんどこないのだから必要ないのかも。もし列車が来たら多分、誰かがやってきて写真の可動柵を引き出すのだろう。



ホーチミン市内のGS、値段は20000ドン(100円)/L程度。屋台のフォーが2杯食べられる値段。



1日目のバス。ヒュンダイ製。新しかった。



2日~3日目のバス。これもヒュンダイ製。シートがビニールレザーの為、お尻が蒸れた。



ミーソン遺跡の駐車場に停まっていたヒュンダイのマイクロバスと、キアのSUV。



ハイヴァン峠でハングル文字の書いてあるローリーを追い越す。ベトナムは韓国車が多い。



ハイヴァン峠で見つけた新道をつくる工事。これって自然破壊では?



峠を下りるとこのような洗車場がいくつかあった。



安全第一・渡邊ブルドーザー興業の文字が



フエ市内入り口にあった料金所。ここって普通の国道ですよね? ちなみにバイクは料金所のわきをすり抜けて行く(無料)。



フエの踏切。ハノイ-サイゴンを結ぶ幹線鉄道なのだが、旅客列車は1日8本!しか走らないとか。暇そうで困っている踏切番と、一時停止などしない車、バイクたち。ちなみにハノイ-サイゴン間は40時間以上かかるそうだ。



ハノイ市内もやはりバイクの洪水。



サイゴンよりは流れている感じ。



GMデウの軽車、マティスがハノイではタクシーとしてたくさん走っていた。なお、ベトナムではレンタカーは存在しない。タクシーに乗るか、運転手つきのハイヤーをチャーターするしかないようだが、まあ、ベトナム人以外で誰もこの街で車を運転したいなんて思わないだろう。

エピローグ

これはハノイ郊外の国道1号線。高速道路では無い。従ってバイクも当然走っている。町中ほどでは無いが追い越したり、追い越されたりするので、クラクションは鳴らしっぱなしだ。道路の向こう側に建設中の橋のようなものが見えるが、ガイドさんの説明によるとハノイからハロン湾まで行く高速鉄道の工事で、いつ完成するかは誰も知らないそうだ。バスはこの後、日が落ちた国道18号線をハロン湾まで突っ走るのだが、照明の点いていない真っ暗な道はスリル満点だった。

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