2011年 中 国 く る ま 事 情 2

北京・オリンピックスタジアム前にあった交通標識


プロローグ

2011.1/17 北京郊外の周口店から北京市内に戻る高速道路で25分間、久しぶりにバスを追い抜いて行く乗用車をカウントしてみた。現在、中国のくるま事情は混沌としているので車種まではカウントせず(できず)、車のメーカー本社のある国名のみカウントする。なお、これらの車のほとんどは中国メーカーとの合弁事業の製品。フェラーリやポルシェなどの完成輸入車は1台も見なかった。(2012.09/10 一部修正・修正内容は下に記載)
 国名 台数 
 ドイツ  30
 日本  13
 韓国  11
 フランス  3
 イタリア  0
 アメリカ  12
 中国  31
 計  100
中国車を除いて一番多かったのはドイツ車、次が日本車で、アメリカ車、韓国車が続いている。ドイツ車が多かったのは中国が改革開放路線に梶を切ったあと、真っ先に中国に入ってきたのがドイツ車。一番よく見る車種はVWと上海汽車との合弁会社である上海大衆というメーカーが生産するサンタナで、上海のタクシーはほとんどがこれ。今ではゴルフ(ジェッタが多い)、アウディ、ベンツも増えた。
GM、フォード、クライスラー車も多いが、豊田、日産、本田、マツダ、三菱等日本車も健闘している。ただ、前回の”中国くるま事情”に記載したとおり、中国は知的所有権意識の希薄な国で所謂パクリが横行しており、とくにビッグ5と言われるメーカー以下の中小メーカーにその傾向が強い。見かけない中国車があり、これはなかなかやるなと思ったら日本車の海外生産モデルのコピーだったりする。

中国車について

2009年、中国の自動車生産数は前年比48.3%増の1379万1000台で世界1位となった。ちなみに日本は793万5000台、アメリカは571万2000台となっている。
中国国内の主要な自動車メーカーは5社で第一汽車(自動車のことを汽車という。VW、トヨタ、ダイハツ、マツダと合弁)、上海汽車(VW、GM、MGと合弁)、東風汽車(日産、ホンダ、プジョー、シトロエンと合弁)、長安汽車(スズキ・フォード・三菱と合弁)、奇端汽車(デウなど韓国車と合弁)となっている。
ビッグ5以下には北京汽車(Jeep他)、江鈴汽車(イスズ他)、BYD(トヨタのコピー)、華晨汽車(ハイエースのコピー)、東南汽車(三菱車のコピー)など300社~800社?という数え切れない数の自動車メーカーが乱立し、合併や連携を繰り返している。丁度、自動車創世記の欧米と似ている。

3日間に見た中国生産車

この北汽集団と書かれたトヨタ・コースターが3日間我々を運んでくれた。どこまでがトヨタなのかは不明。



環状4号線、いつもこの位の流れなら良いのだが。



奇端汽車・デウ・チコ、元々はスズキアルト。



定陵駐車場で見かけた車。左から上海汽車・シボレーアヴェオ、東風有限汽車公司・日産ティアナ、東風本田汽車・ホンダアコード。



八達嶺に向かう高速道路を走っていた北京現代・サンタフェ。ナンバープレートが付いていない。



なんと、中国にもETCがあった! しかし中国人はカードを信用しないためか、利用する車はほとんどいない。ちなみに我々の乗ったコースターには装着してあったので、料金所はスイスイと通過する。



このクラウンは第一汽車・紅旗HQ3。右側は同じく第一汽車・VWジェッタ。



故宮の中を巡回していた警察のEV車。多分BYD製。



北京にはトロリーバスが現役で走っている。なお、手前の車は上海汽車・VW SAGITAR、その前の2トーンカラーの車は北京現代・エラントラのタクシー。なお、北京のタクシーはほとんどが2トーンカラー。



天津一汽夏利・VITA・N3。ベースはダイハツ・シャレード



上海汽車・ビュイック?。ナンバープレート無し。



華晨汽車製・金杯(jin-bei)。トヨタハイエースのコピーだが、これはトヨタ公認のようだ。



これも金杯だが、救急車っぽい。こんな路地裏に何故?



パジェロのパクリ。



BYDのF0。最初見たときは中国車もなかなかやるなと思ったが、よくよく調べてみたらトヨタAygo(アイゴー)という海外でしか販売していない車のパクリ。ルーフエンドの羽は、ご愛敬。



奇端汽車製・奇端QQ。韓国のデウ・マティスのパクリ。奇端は違うと言い張っている。



トヨタ・LAVフォーのようだがパクリっぽい。



一汽豊田・ランドクルーザープラド。これは本物。



月曜日朝の渋滞。北京市は今年から新車登録の制限を設けるそうだ。



北京ではエンジンバイクは禁止されており、このような電動バイク、電動スクーターが走っている。



自転車はめっきり少なくなった。そして自転車をこいでいるのはみな高齢者ばかり。



荷物を満載した家具店の車のようだが、こんな風景も珍しくなった。

エピローグ

中国機械工業聯合会の張小虞・執行副会長によると、”中国自動車産業はこれから20年間にわたり成長の黄金期を迎える。20年には自動車保有台数が2億台に達し、7人に一人が自動車を保有するようになるが、これは現在の世界平均水準に到達するに過ぎず、中レベル先進国の水準に達するにはなお長い道のりを歩まねばならない。”
と、暢気なことを言っているが、はたして20年先まで、石油が今のように潤沢に、安く入手できるか誰も解らない。中国の消費者にとって車は初めて所有する夢の乗り物であり、見てくれが立派で、しかも安い車が一番ということになり、今のところエコカーの入る余地は無さそうだ。メーカーも売れない車造りには及び腰で、エコカー分野に関して中国は完全に出遅れている。
しかし、石油はいつか枯渇する。その時に中国の自動車産業はどうするのか、世界は息を殺して中国の行き先を見つめている。

2011/01 chiaki-k 記す


OMAKE

周口店手前の幹線道路をゆうゆうと渡る小父さん。横断防止用に高いフェンスが設けられているのだが、乗り越えてきたのだろうか。

訂 正

2012.09/07にBBSに以下のような書き込みがありました。
”あと「中国くるま事情2」のプロローグのところに'中国は完成車輸入は認めていない'とありますが、そんなことはないと思います。高価ですが、実際完成車輸入もたくさん売っているし、走っていますよ。” by 《》 nek さん。 
WEBで調べてみたところ、フェラーリは20年前、ポルシェは10年前から完成車の輸入販売をしていたことがわかったのでプロローグ記事の内容をを訂正させていただきます。《》 nekさん、ご指摘ありがとうございました。
それどころか日本で2億円するブガッティ・ヴェイロンを、30歳前後の中国人男性が4000万元(約5億200万円)で購入したとの記事も発見!さらにはアストンマーチンが3800万元(約4億9千400万円)、珍しいものはスエーデンのケーニセグ(知りません)のアゲーラRとかいうスポーツカーも4000万元で売れたそうです。
これらの高級車には28%の関税と17%の増値税?が科せられているそうですが、それにしても高額です。販売したディーラーは大もうけでしょうね。2011年に香港・マカオでは高級車をたくさん見ましたが、中国本土も同様とはビックリしました。
ナニワの企業経営者である戸田大介さんのブログによると、2011年の時点で中国はアメリカを抜いて世界1のロールスロイスのマーケットだそうです。ベントレーも同様で、フェラーリ、マセラッティ、ポルシェは世界第2とのことです。別のサイトを見ると、ポルシェは2012年に中国が世界1のポルシェのマーケットになると見込んだようで、中国生産も考えているとのことです。
まあ、なんとも景気の良い話がポンポン出てきますが、思い出してみるとバブル絶頂期の日本とそっくり。上り坂があれば下り坂もあるはずで、この好景気がいったいいつまで続くのかは神のみぞ知る、といったところではないでしょうか。

2012.09/10 chiaki-k 記す


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