2012年 インドネシア く る ま 事 情

バリ島、土砂降りのウブドで見かけたトヨタ・キジャン・イノーバ。インドネシアで最も人気のあるミニバン。交差点向こう側の青い車はバリ・タクシー車種はトヨタ・ヴィオス。インドネシアもトヨタ車の圧勝。なお、オープンカーは1台も見かけなかった。(そりゃそうじゃ~)

プロローグ

1997年のアジア通貨危機によって、インドネシア経済は深刻な打撃を被り、その政治・社会構造も変革を余儀なくされました。しかし、この激動から10余年を経た現在、民主化の進展と政治的安定の中で、同国経済は高い成長率を維持しています。ここ5年の経済成長率は5~6%、リーマン・ショックの影響が冷めやらぬ2009年でさえ4.0~4.5%の成長が見込まれています。こうした状況から、国際通貨基金(IMF)はインドネシアを「不況から免れた国」と評しています。
 2010年以降もインドネシア経済の展望は極めて明るく、ある日系銀行は2011年の経済成長率を7%と試算しているほか、IMFもインドネシアの国民1人当たりの国内総生産(GDP)は、2008年の2242米ドルから今後5年間で3000米ドル前後に到達するとの予測を示しています(図1)。ちなみに、この3000米ドルという数字は、一国に消費革命とモータリゼーションをもたらすとされる水準です。

中小企業国際化支援レポートより抜粋

ちょっとほめすぎの感じはあるが、インドネシアの経済は2012年1月現在、まずまず好調といって良い。

インドネシアの自動車産業

インドネシアの自動車メーカーで最大のものはアストラ・インターナショナルという名のコングロマリット(複合企業)。トヨタ、ダイハツ、いすゞなどと合弁事業を展開している。代表的生産車はトヨタ・キジャン・イノーバで2~2.5LのFRミニバン、アバンザという名の1.3L~1.5LのFRミニバン、ダイハツセニアという名のアバンザの兄弟車、そしていすゞのピックアップトラックなど。
インド・モービルグループはスズキ、日産、マツダ、日野などの車を生産あるいは輸入している。代表車はスズキ・インドモービル・モーターが生産するスズキ・APVで日本には無い7人乗りのFRミニバン。他にスズキ・ジムニーやキャリーも生産している。
プロスペクト・モーターはホンダJAZZ(日本名フィット)、CR-V、ストリームなどを生産又は輸入販売している。
その他は三菱、日産ディーゼル、プジョー、BMW、シボレー、ベンツ、ヒュンダイ、キア、プロトンなどがあるが、ノックダウン生産か輸入販売となっておりいずれも少数派。スハルト時代より共産党が非合法化されている関係か中国車はゼロ。

インドネシア各地で見かけたくるま達

ジャワ島のツアーバス。三菱の新車で、30人乗り。乗降ドアが後にもあり快適だった。多分インドネシア製かタイ製。



マノハラホテルで見かけた救急車と思われるデリカバン。我々が腰に巻いたサロン(腰巻き)を回収(救急?)していた。



インドネシアの1家に1台、あるいは1人1台あるのはバイク。ほとんどがインドネシア製の日本車。なお、バイクの代名詞はホンダとなっており、ヤマハのホンダ、スズキのホンダと呼ばれる。1台12~15万円ほどで、排気量は50cc~120ccとのこと。



ホンダ・CR-V発見。



左はトヨタ・アバンザ、右はトヨタ・キジャン・イノーバ。インドネシアでミニバンが人気なのは子供が4人くらいいるのが普通だとの理由。価格は日本円に換算してアバンザが150~200万円、イノーバが180~250万円といったところ。インドネシア人の平均月収は300$(24,000円)なので、おいそれとは買えないだろうが、町中や郊外でも沢山走っていた。



バティック工房の店の前に駐まっていた車。左は三菱デリカ、右はキアのバン(名前わかりません)。



道端でよく見かけるのはガソリン入りのペットボトル。現地ガイドさんに聞くと、わざわざ遠いスタンドまでガソリンを入れに行くより、近くの方が経済的なのだそうだ。値段はスタンドより少しだけ高いとのこと。



おっと、出ました3人乗りバイク。まあ、こんなのは普通。そもそもバイクの椅子自体が数人乗れるようにロングシートになっているのだ。



ジョグジャのアジスチプト空港前に駐まっていたミニ。インドネシアでは珍しい部類。



スズキ・ワゴンRとトヨタアバンザ



スズキ・キャリーワゴンなんだけど、なにか変。後部ドアってスライドだったはずでは?



ジョグジャのタクシー。トヨタ・アバンザ。



そしてキジャン・イノーバ。あれ、取っ手や燃料口がメッキだ。なお、裕福な家庭ではドライバーを雇って、2列目は夫婦の席、3列席は子供の席としているケースもあるそうだ。



ホンダ・ジャズ。日本名はホンダ・フィット。



プナタラン・サシ寺院の前に駐まっていたジムニー。ん、BMWが通過したぞ。



ティルタエンプル寺院の駐車場に駐まっているのは左から、2代目キジャン、アバンザ、2代目キジャンが2台、そして後ろ向きがスズキAPV。
キジャンはもともと東南アジアの悪路走行用に開発された車なので、キジャン・イノーバとなったいまでもフレームを有している。また、地上高も高く造られ、雨期の洪水道路に負けないタフネスさを持っているため、インドネシアをはじめ東南アジア諸国で人気がある。



これがスズキ・APV。1500cc 7人乗りのFRミニバンなのだがバリ島ではチャーターカーとして沢山見かけた。
なお、制度上の問題で日本の国際運転免許ではインドネシアで車の運転は出来ない。どうしても運転したい人は現地で免許を取得するしかないようだが、時間はともかく、かなりのお金がかかる(含む・袖の下)模様。それより、ドライバー付きの車をチャーターした方が安全だし、支払いも1日50$程度と安い。



屋根の上は特等席。でも急ブレーキはこわいぞぅ。



日産セフィーロ。多分中古で輸入したのだろう。



ガソリンの値段は4,500RP/L (ルピア 1RP=100円)つまり45円/Lなので単純に考えると日本より安いのだが、現地ガイドさんは、日本人の1/10という給与水準を考えると日本のガソリンは安いと言った。
ガソリンの値段は国で決められており、どこのスタンドでも値段は同じだった。と、いうか、見た限り全て同じ名前のGSだったような。



雨のデンパサール市内を走るマツダ・デミオ。マツダ車はインドネシアでは珍しい。



おっと、キアがからんできた。



逆駐車は普通。車のすきまをバイク達が追い抜いてゆく。



クタにあったスズキSX4の看板。インドネシアではランドクルーザーやジムニーなど地上高の高い、4駆車も人気。



クタの街の中にあったKFCの店、でか!



トヨタ・アルファードはインドネシアでは生産していないので日本からの輸入車。関税率は100%で値段はおよそ1300万円! インドネシアの皆さんの夢の車だそうだ。



スズキ・キャリーだが、なにか違う。多分排気量は850cc位では?

エピローグ

マレーシアや香港もそうだったが、インドネシアも日本車だらけであった。走っている車のおよそ95%が日本車で、バイクにいたってはほぼ100%という高率。これは第2次世界大戦終戦後、残留日本兵がインドネシアの独立運動を助けたという歴史も手伝って、とても親日的であることが影響していると思われる。
2009年のある世論調査では、インドネシア人による日本人への好感度は、世界21カ国中で首位という調査結果もあるくらいで、戦後一貫して反日教育(歴史教育だと言っているが・・・)を行っているC国やK国とは次元が違う。
イギリスが統治していた時代の影響か、車は右ハンドルで左側通行。バイクの数が多いのを差し引くとまるで日本国内を走っているような錯覚を覚えた。ただ、車(バイクも)の運転は荒い。
4日間じっくりと現地ドライバーの運転ぶりを見てきたが、最初荒っぽいと思った追い抜きなどは、最後にはなんとも思わなくなった。強引な譲り合いと言うのか、なにか暗黙の了解が存在するため、先が読めるのだ。ちなみにこの4日間で事故は1件も見なかった。
インドネシアの人口は2億3千万人で世界第4位。インド(13億人・2位)やベトナム(8400万人・12位)などと共に、これから期待の持てる国のひとつである。

2012.01/19 記す


OMAKE

これが初代のトヨタ・キジャン。1977年にインドネシアで生産開始された車。はしごフレームにカローラ系の足回り、そしてカローラ系のパワートレインを組み合わせた頑丈な車で、ランドクルーザーと併せてトヨタの名前を東南アジアに知らしめた記念の車とも言える。
プレス機がおそまつで、湾曲したプレスが出来なかったため、こんな折り紙細工のようなデザインになってしまったが、今からみると、全てを削ぎ取ったようなスタイルが、かえってカッコ良く見える。なお、キジャンはインドネシアの国民車と呼ばれている。

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