「間違いのない車選び」について


プロローグ


多少でも車に興味のある方なら、「間違いだらけの車選び」という本のタイトルをどこかで聞かれたことがあると思います。
徳大寺有恒というペンネームの自動車評論家さんが、毎年、毎年、21年間書き続けているロングセラー誌で、私の本棚にも全巻そろっています。今年もそろそろ本屋さんの店先にならぶ時期となりました。その年に発売になった新車はすべてが、他は国産車ならほとんど、輸入車なら主だった車が歯に衣着せぬ徳さんの舌の餌食になるという自動車メーカーから見ると世にも恐ろしい!車酷評本であります。
この本でやり玉にあげられ、消えていった車も数多くあります。(バイオレット、ラングレー、クイント、ジャスティ...)また、逆に高く評価され、ベストセラーになった車もあります。(レガシーもその1台)いずれにせよ、数少ない(1台10年以上乗るから)私の車選びの大きな参考になった本です。


車は売っても買っても損をする!


これは徳さんが「間違いだらけの車選び」の第1巻から言い続けている言葉ですが、とにかく車というものは、とんでもない金食い虫!なんです。
車を購入するとき、税金や保険料などがどっさりかかることは皆さんご存じですが、車そのものの値段がはたして適正なのかどうか、皆さんは疑ったことがおありでしょうか。我々が購入できる車はすべて量産車です。もし、月面車のようにこの世に1台しかない車を造ったら、とんでもない金額になるのは間違いありません。
ヘンリー・フォードが流れ作業による大量生産方式を発明してから、自動車は一般庶民の乗り物となった訳ですが、この大量生産というやつは、つくればつくるほど1台あたりの製造単価が安くなるというというおまけがついています。したがって、月500台しか造っていない車と、月10000台以上造っている車が同じような値段というのは、絶対おかしいですよね!結局車の値段というやつは、原価計算ではなく、経営判断によってつけられていると考えて間違いないと思います。したがって、さほど開発費のかかっていない(たとえば、○ラウンとか○ークKなど...)車に大枚をはたくことは、まさにメーカーを喜ばせるだけで、ユーザーは大損していることに誰も気がついていません。
つぎに、新車を購入する時、下取り価格のことを考えて購入される方がいらっしゃるようですが、これもいかがなものでしょうか。少なくなったとはいえ、最初の車検がきたときセールスマンに「いい値で下取ります」などと言われて、車を買い換えていらっしゃる方がまだいるようですが、まー、私に言わせれば愚の骨頂としか言えませんな。
まあ結局、車は売っても買ってもメーカーやディーラーはもうかり、ユーザーは損をするだけです。


車選びは配偶者選び?


へんなたとえですが、車選びはちょうど配偶者選びとよく似ていると思います。見合いであれ、恋愛であれ、一生(車なら10年以上)つきあわねばならない人(車)を選ぶんですから、何度もデート(本やカー雑誌からの基本的データの入手、そして試乗)して、よーく吟味する必要があります。
まず、大事なことは相手の性格を把握することです。(自分がほしいものは、スポーツカーなのかorRVなのか、高級車なのかorコンクパクトカーなのかetc...)
つぎに、経済観念はどうかもチェックする必要があります。自分の収入を理解しているか、とんでもない浪費家では無いかどうかよーく調べることです。(これはわかりますよね)そして、大いに気に入れば次の段階に進んで良いと思います。
何度かのデートや初体験(?)もすんで、いよいよゴールイン(購入契約)ですが、婚姻届(購入契約書)に判を押したら、後のことは(他の車は)考えない方がよろしいと思います。
とにかく、配偶者も車も中身が1番大事です。外見や値段(うーん、これは車だけ)だけで飛びつくと、たいてい、ろくな結果にはならないと思いますよ。


本当に格好いい車とは


日本のユーザーは車を選ぶ時、いったい何を基準にして選んでいるのでしょう。価格でしょうか?性能でしょうか?(もっともカタログスペックばかり気にする人もいるが..)経済性でしょうか?
もちろん、それらの要素は皆大事ですが、1番は”見てくれのいい車”(他人が見て!)じゃーないでしょうかねぇ。所謂「格好いい」車を選びたい訳です。
格好いいことは重要な選択枝のひとつだとは思いますが、大半の日本のユーザーはなにか勘違いをしているような気がします。つまり、自分が格好いいと思うより、他人が見て格好いいと思われることを大事にする節が感じられます。
本当に格好いい車とは、その人のライフスタイルor価値観にぴったり合っている車のことで、他人の目ばかり気にして、無理やり値段ばかり高い車に乗ったり、妙に屋根が低く、そのくせドアが4枚ついているような、へんちくりんな車を選ぶことは、私に言わせればチョー、カッコ悪い選択としか言えません。


なんといっても試乗が一番大事


つぎに、BF5のサイトでも少しふれましたが、車選びでもっとも大事なことは、試乗することです。
本当は同じ車種のレンタカーでもあれば、1日借りてみるのがBESTでしょうが、現実はそうもいきませんので、ディーラーへ出かけて、試乗を予約しましょう。(いきなり、は避けたい)
予約した日時に遅れずに、ディーラーに着いたら、まず車の周りを一回りしてみましょう。雑誌やカタログとイメージが違わないかどうかのチェックです。ドアの開け具合、そして閉め具合はどうか、乗り降りはしやすいか、そして座席に座ったらシートポジションの調整、ハンドルやペダルの感覚はどうか、そして自分の体型にあっているかどうかを見ます。
エンジンをかけてみましょう。かかり具合・音や振動・回転フィールなどを確かめましょう。エンジンをかけたらすぐ走り出さずに、各種ペダルやレバー、スイッチ類をいじってみましょう。輸入車の場合、ウィンカーとライトのレバーが逆になっている場合がほとんどですから、初めて触れる場合は少し長く時間をとって慣れるようにしましょう。
いよいよ、走ってみます。まずMT車であったら、クラッチとシフトの具合はどうか、AT車であったら変速ショックはどうかなどを感じ取りましょう。加速はどうか、ハンドルの重さは、乗り心地は、そしてブレーキのフィールは?そして、一番大事なことは自分の考えていたイメージとどれだけ違っていたかチェックすることです。それから急加速、急ハンドル、急ブレーキは絶対やってはいけませんよ。(あなたの印象をチョー、悪くしまーす)
なお、滅多にないとは思いますが、試乗させてもらえないようなディーラーがあったら、そこへは2度といかない方がよろしいと思います。


購入契約へ


たいていのユーザーが一番重要視し、時間をかけるのが、価格交渉ではないかと思います。まー、たしかに高い買い物をする訳ですからじっくり、ねっちりやっても構わないと思いますが、あまりねちねちやると相手のセールスさんはどう思うでしょうか?「損をしないためには、値切れるだけ値切るのだ!」という言い分も解るような気がしますが、私は値切れる車と、そんなに値切れない車があるような気がします。
上の方でも触れたように、車は生産台数が多ければ多いほど1台あたりの単価は下げられます。月に、500台しか造っていない車と、10000台以上造っている車では、当然値引き額が変わって当たり前だと思います。また、メーカーがその車へ、どれくらいコストをかけているかによっても違ってくるはずです。
あと、人気、不人気によっても値引き額は違います。いくら値引き額が良いといっても1週間で飽きてしまうような不人気車をつかんでしまっては、かえって高い買い物になってしまうのではないでしょうか?
私の場合、価格交渉はほとんどしません。ただ、自分がいかにこの車を大いに気に入ったか、そして予算はこれだけしか用意していないことを話したあと(これって、やっぱり価格交渉?)、セールスさんの示した金額でほとんどハンコを押しています。
転職したり、異動しない限り、そのセールスさんとは長いつきあいとなるんですから、お互いにいやな思いは残さないほうが後々いいんじゃないでしょうか。


1年でも長く乗るために


さて、めでたく納車となって、心弾む初乗りと相なりましたが、ここで気をつけたいのが所謂「慣らし運転」です。
1台の車には何千カ所という金属対金属あるいは金属対非金属の摩擦部分があります。また、その摩擦部分を潤滑するため各種油脂類が流れたり、燃料と空気を最適に混合したり、と実に複雑な構造になっています。最近の車は工作精度も良く、ばらつきも少ないので昔ほど神経質になる必要はありませんが、こういった部分のすべりを良くしたり、流れをスムーズにさせるためには、やはり最初に一定の時間が必要です。
エンジン、ミッション、そして各種ジョイント部分
は言うまでもありません。また、タイヤもゴムの部分とスチールベルトの部分を良くなじませないと、セパレーション現象をひきおこし、寿命を著しく縮めてしまうことも考えられます。
ショックアプソーバーもしかりで、ガス部分はともかく、オイル部分を良く慣らさないといけません。
とにかく、車を1年でも長く乗るためには、必ず「慣らし運転」は励行したいですね。
それと、その車を運転する人間の”慣らし”だって必要だと思いますよ。


慣らし運転は1000km


さて、「慣らし運転」は何キロ走れば良いか?これは、意見の分かれるところですが、私はエンジン・足周り関係は1000kmで良いと考えています。(タイヤは200km)
とにかく、急のつくこと、急発進・急ハンドル・急ブレーキは禁物、エンジン回転は3000回転以上なるべくあげないようにしましょう。速度は500kmまでは60km/h以下を保ち、800kmまでは80km/h以下、そして最後の200kmは100km/hまで出していいでしょう。実は、私BF5までこの慣らし運転はほぼ1日で完了していました。次の車はどうするか未定ですが、なるべく早く仕上げたいと思っています。


1000km(1ヶ月)点検は必要か?


どこのディーラーも1000km(1ヶ月)点検は無料でやってくれるはずですから、やらないよりはやったほうが良いと思います。
1000km走るうちに、試乗では解らなかったことや、細かいトラブル等が必ず出てくるはずです。
クレームは大いにつけて良いと思いますが、対応できるものとできないものがありますから、その辺は良く判断してください。それと、こういった時にこそ、セールスさんとの仲がものをいってくるはずです。
交換部品や消耗品は有料ですが、よく新車のオイルには”研磨剤”が入っている!という話を聞きます。
だから最初の点検でエンジンオイルはもちろん、ミッションオイル、はたまたデフオイルまで交換する方がいらっしゃるようですが、私はその必要は無いと思っています。
そもそも、あれだけコストを落とすことに熱心なメーカーがそんな余計なことをするでしょうか?それにもし本当にそんなものが入っていたら車が壊れちゃうじゃーないですか。
余談になりますが、私の場合エンジンオイルは5000kmごとに交換しています。(自分で下抜きします)
また、オイルフィルターは10000kmごとに(これも自分で)、ミッション・デフオイルは50000kmで交換しています。(これはやってもらっています)今までそれでおかしくなった車は1台もありませんでしたよ!


エピローグ


今、右を見ても左を見ても、景気の悪い話ばかりです。自動車メーカーも同様で、車...売れません。(以前と比べれば)でも、私は今までが売れすぎていたのではないか?これが正常な姿なのでは、と密かに思っています。
日本人の乗用車の平均的な買い換え年数は5年といわれてきました。でも昨今の不景気で多分6年位に延びるのではないでしょうか。自動車メーカーや新車販売ディーラーさんには少し酷な言い方ですが、私はこれで良いと考えています。
新車を1台製造するのに、鉄・アルミ・プラスチック・ガラス・ゴム・化学繊維・はたまた牛皮!などなどありとあらゆる資源がつぎ込まれています。電気、ガス、石油も同様です。リサイクルの技術もたしかに進歩はしていますが、まだまだです。(リサイクルも金しだい・わかりますぅ?)
とにかく資源は限りがあることを、メーカーも、ユーザーも、もう少し本気に考えたほうが良いと思います。
私は車は好きですが、この好きな車があとどれくらい存続できるのか、最近少し不安になっています。そこで、限りある資源を無駄なく有効に使うため、また、私たちの子供や子孫たちに夢や希望を少しでも残すため、1年でも長く車に乗ることを皆さんに提案して、このページを閉じたいと思います。


1998年11月16日   chiaki-k 記す


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