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コラム
1番『BSEと吉野家』 | 2番『建築家をめざす中高生の諸君へ』 | 3番『クローン』 |
4番『耐震偽造物件をどうするか』 | 5番『建築基準法』 | 6番『2つの法律』 |
7番『家庭教育カウンセラーと脳科学者』 | 8番建築家・降幡廣信氏の講演から | 9番 |
8番 文化講演会 講師 降幡廣信先生 「民家の今後はどうあるべきか」 |
平成24年12月 |
(文責)情報広報委員会 上原明彦 建築士ネットワーク・佐久2012の文化講演会にお迎えした降幡先生は ■前半は「民家の生い立ち」として縄文時代から近代にいたる民家発展の過程に触れられた。寒冷地ほど土間を広くとり、また土間があってはじめて床が生きるとの説明には、自然環境や生活(営み)を通してその土地固有の民家を生みだした先人の知恵をひしひしと感じさせられた。萱葺きを長持ちさせるために小口を見せない寄棟が主で、小屋裏利用の明かり取りの工夫から多様な形態が現れ、時代を経て誰もが満足できる普遍の美しさを獲得したといえるとのお話。具体例として白川郷の合掌造りは、平地の少ない山間で建坪が広くとれない制約の中、養蚕のための床を小屋裏多層に確保し、豪雪にも耐えるには必然とも言える形・・・最も安全で使いやすい家になっているのであると。 1929年旧三郷村生まれの降幡先生は当年83歳。これまで手掛けた民家
後記:遅まきながら拝読した『古民家再生ものがたり』(晶文社)には、愛着ある古屋を壊す気持ちになれず、思案の末に降幡氏へ手紙を書き送ったり、一家で信州を訪問したりする幾人もの家主のものがたりが、清々しい文章と写真で紹介されている。草間邸再生にあたり〈再生工事の五カ条〉として掲げた基本姿勢は今も変わってはいないという。清家清氏の奥様の実家を設計されたエピソードも楽しめた。古いものは本物であり、本格的なものは美しい! 長野県建築士会佐久支部会報「ちくま平成25年1月号」掲載 |
7番 「第57回日本PTA全国研究大会みやぎ大会報告」
:::::家庭教育カウンセラーと脳科学者::::: |
平成21年9月 |
佐久では夏休みも終わった8月21、22日に開催された日Pみやぎ大会には【向き合おう!まっすぐに 〈家庭教育〉をテーマとした分科会での内田玲子先生(家庭教育カウンセラー)の講演は田中真紀子ばりの 全体会の記念講演は、脳トレで有名な川島隆太先生(東北大学)による〈脳科学から見た早寝・早起き・ ある意味対照的なふたりの講演だったが、根っこは日常の生活とことばにかかっており、親がそれをどう見せるか 「全佐久PTAだより第2号」掲載 |
6番 『2つの法律』 |
平成21年9月 |
改正臓器移植法案が衆議院を通過した。はたして12年目の改正がなるかは政局がらみの国会運営次第になりそうだが、各党各議員が見せた対応には興味を引かれた。「脳死=人の死、年齢制限なし、家族の同意のみで移植可能」というA案が可決されたことはある種の衝撃であった。この案は世界保健機関の推奨とほぼ同じだという。法の必要性は認めるものの、人の死を法律で一様に線引きする発想に違和感をもつ日本人が多いのではないかと思う。脳死判定や移植を拒否する自由は確保されているA案ではあるが、原則が大手を振るうようになると例外を咎める空気が生じないとは誰が言えよう。 いっぽう改正建築基準法はどうか。かいつまんで言えば【認定プログラムをノーエラーで通った建物は安全性を有する】という、世界に例のないような法20条に呆れかえったのが2年前。 以来次々と送り出される関連法制度は報道で扱われるのも申し訳程度で、一般社会から見れば所詮、建築界というコップの中の嵐に過ぎないかのようである。構造設計実務に携わる者の多くは、考え得る限りほぼ最悪の制度改革にやりきれなさを感じているのではないかと想像する。わずかに基準法は安全の最低レベルであることが広く知られたことは怪我の功名かも知れないが、本来なら建築物の安全性を保証する上で「確認と検査制度」に限界があることをまず認め、そのことを社会に周知するべきであった。国民と専門家との認識のギャップを埋める努力をせずに法制度の手直しだけに狂騒した結果、構造に限って言えば、この告示式を使い、応力図は○号様式で描き・・などというゆがんだ技術法になってしまったことは本当に恥ずかしい。 過日亡くなられた木村俊彦氏は著書の中で新耐震設計法の成立当時すでに『厳密になればなるほど、際限なく面倒な計算にのめり込んでいく』ことの危険性を述べておられた。構造設計方針も構造計算も、細かく書き込めばいくらでも書けるものなのである・・それこそ泥沼に足を突っ込んだように抜け出せなくなる。 脳医学の発達や人工呼吸器の登場が脳死を発見し、コンピュータや震災が新しい設計法を生んだように、日々新たな知見が加わり、社会の要請も多様化する。 現時点で全ての問題が解明されているわけではないのだから、将来へ向けて柔軟性を持たせる発想こそ必要なのではないか。 それがないと、人に奉仕するはずの法がこの先も道を誤る恐れ無きにしもあらずと危ぶむのである。 長野県建築士会会報「建築士ながの 9月号」掲載 |
5番 『建築基準法』 |
平成20年2月 |
社会が求めている安全性を実現する(姉歯物件を排除する)ために法改正が行われたと理解したいのだが、 ■構造設計にかかわる法改正は大きく4点■ @は実際に設計した者が記名押印すること→つまり今まではそうでなかったということ。 A一定規模を超えたり、特別な配慮を要する計算方法を採用した場合、その構造計算書は専門家(判定員) B新たな認定プログラムを使用した構造計算結果は、法的にお墨付きが与えられ、審査の期間や手数料で C構造設計一級建築士の資格がないと一定規模の構造計算は有資格者のハンコをもらわないといけない 以上の4点に対する私の評価 @は○ Aは△ Bは× Cも× トータルすれば落第点ということになってしまう・・・ ■建築確認制度について■ 倫理観ゼロの建築士、形骸化した審査制度、下請けいじめのゼネコン、詐欺まがいのコンサルタント業者、 では、国のすべきことは何か?建築物の安全性を保証する上で、「確認と検査制度」に限界があることを 「確認と検査制度」が建築物の安全性を本気で保証しようとすれば、設計監理業務を二重に行うこととなり、 ■我々には、犬小屋の真の耐力だってわからない■ 建築は工学であって、物理学や数学のように全宇宙を厳密に記述するようなものでない。つまり構造設計は ■最後に吉岡忍氏の「供述調書漏洩事件」に関するS新聞寄稿より■ 「(前略)・・歴史の教えるところによれば、権力がムキになるのは、たいてい自分の落ち度を棚に まるで、耐震偽装事件とその後の法改正の混乱を論じているかのようではないか ■用語 構造設計:建築設計は意匠、構造、設備に分化しており、一級建築士であっても、仕事として全てを 建築確認:建築物を立てる場合、着工前にその設計が建築基準法に適合していることの確認を受け 設計監理:設計は計画を練り、設計図書を仕上げるまでの仕事。監理は建築主・設計者の立場で 短期荷重:風や地震のように短時間だけ建物にかかる外力(荷重)のこと。これに対して床・屋根など 工学的:数理的に厳密な解が困難な場合に、実用上の不都合が無いことを判断して設計に近似値を用いる 構造計算適合性判定制度(略称=適判): 平成19年6月20日から一定規模以上の建築物について指定機関 一貫構造計算ソフト:建物データを入力すれば、許容応力度計算(震度5での応力変形解析と断面検定) 木村俊彦:構造設計家。大正15年香川県生れ。前川国男建築設計事務所、横山建築構造設計事務所を経て |
4番 『耐震偽造物件をどうするか』 |
平成17年12月 |
先月発覚した、構造計算書偽造事件は、60棟をこえるマンション・ホテルが存在することから、 ■追記 この事件が報道された時、いずれも鉄筋コンクリート造(RC造)の物件であり、鉄骨造(S造)の物件が ■追記(その2)年が明けて平成18年1月12日現在、耐震偽造物件は90棟を越えたようだ。 |
3番 『クローン』 |
平成17年10月 |
食うことが精神的な行為でもあるとすれば、食うべきでないものは確かにあると思うのだが・・・ |
2番 『建築家をめざす中高生の諸君へ』 |
平成17年4月 |
日本の教育制度では、大学の建築学科のほとんどが工学部に属し、芸術系より理数系の勉強の比重が大きい。 しかし、他の工学系の学科とは毛色が違うことは確かで、私の学生時分でも、工学部の文系などと 陰口を言われたものである。・・・いや、ほめ言葉であったのかもしれない。 (現在は学科の再編などで、建築学科という看板が○○環境やら△△システムなどに変えられているところも増えた) 皆さんがイメージするよりも、卒業生の就職先は幅広く、設計の仕事につく者の割合は案外少ないのです。 建築学科を卒業してどんな仕事につけるかを上げると、だいたい次の7つくらいになっている。 @設計事務所 a)意匠 b)構造 c)設備・環境 A建設会社・・・ゼネコン、工務店、ハウスメーカー B建築関連産業・・・鉄鋼、不動産、建材 C一般企業・・・トヨタ、日立、鉄道、商社などの施設営繕部門 D官公庁・・・国、地方の建築課・都市計画課など E大学・学校・・・大学、高専、工業高校の教員 Fその他・・・小田和正、菊川怜など 時代は変わっても衣食住の住はまぎれも無く建築が主役であるわけだから、上のようにあらゆる分野に進む道がある ともいえるのだが、@〜Fのどれに進もうと考えるかには、かなりの意識の差がある。 補足のコメントをすれば、 @はデザイナー志向、独立志向の人。設計が好きな人でないと続かない。 皆さんがイメージする建築家に一番近いが、分業が進んでいる。収入や安定性など待遇面は一般に恵まれない。 安藤忠雄や伊東豊男などの建築家はこの中から出てきたのだ。 Aは大多数の人の進路になっている。設計部門と工事部門に大きく分かれるが、やはり工事が主であり、 中小建設会社では設計部門を持たない社も多い。 Bは建築に関連したあらゆる業種が当てはまる。 Cには大企業、人気企業がたくさんある。 しかし本業は建築ではないため、建築を専門にやっていても本流にはなれないつらさがあるかも・・・ Dは説明不要。公務員のこと。 Eは研究や教育に向く人。建築そのものを造るのでなく、建築をめざす人を育てる仕事。 ある意味で、その国の建築レべルを高めも低めもする。 名を成した建築家は逆に大学の先生になりたがるようだ。 Fも説明不要。才能のある人にだけ許される道! 建築士の国家資格には一級、二級、木造とあって、一級建築士だけでも20万人いると推定される。 昨今の建設不況もあり、数の上では過剰な状態が続いているのだが、 上にも述べたように実際に設計の仕事ができる人は、自然と限定されてくるのである。 最近は猫も杓子も資格資格と言うが、資格はその人の能力や適性を保証するものではないことを肝に銘じてほしい。 学校の先生はみな教員免許を持ってはいるけれど、 教育者としての能力に差があることは皆さんも実感としてお分かりでしょう。 資格は入学試験と同じで、あくまで入口(最低限)で、その後どうやって能力・技術を伸ばしていけるかが勝負なのです。 ここに書いた話は、別の分野を志望する場合でも共通する面が多いはず。 どんな仕事でも、何のために働くのかという動機付けが一番大切で、それには好きな仕事であるかどうか、 覚悟して自分でつかんだ仕事かどうかが大きいように思われます。 本で調べたり、人生の先輩に聞いたりする中で、幅広く学んで自分を生かせる道を探してほしい。 そして、もし建築へ進路を求めたならば、厳しいけれどぜひ@を目指してほしい。 建築設計の中身についてはまた別の機会にふれます。 |
1番 『BSEと吉野家』 |
平成16年9月 |
BSE(牛海綿状脳症)の発生により、平成15年12月にアメリカ産牛肉の輸入停止措置がとられた。 その後、在庫牛肉が底をつく今年3月まで、吉野家の店頭には牛丼を求めて客が列をなした。 しかし、自分の頭で考えてみて欲しい。その在庫牛肉は相当に危険なものなのではなかったのか。 日本ではBSE発生時点の在庫肉は全量焼却処分したというのに・・・。(一応したことになっている) 牛肉と言えば精肉しか知らない人がほとんどの今、知らせるべき情報とは何か。 情報化社会の通例として、多くの情報があるようだが、それらのほとんどはダブっており、本当に必要な 情報は表に現れない。たとえば、牛には乳用種と肉用種といて、さらにその交雑種がいるわけだが、 いずれ最後は全て屠殺されて肉となる。そもそも♂は肉用にしかならないのだが・・・ 一般の方には、繁殖や搾乳といった用途を経た後、肉用にまわされる牛があるということを まず知っておいてほしい。(牛肉全体の1/3くらい) 30ヶ月齢以下で供給される牛肉:食用肉用種、交雑種、乳用種♂ 30ヶ月齢超えて供給される牛肉:繁殖用肉用種(母牛)、乳用種♀(搾乳牛) 米国には乳用種:ホルスタイン、ジャージー、ブラウンスイス、エアシャーなど 肉用種:ヘレフォード、アンガスなど 交雑種:乳用♀に肉用♂を交配など がいて、食用向けの肉用牛は30ヶ月以下で肉となる。 食用向けの肉用牛などと変な表現をしたのは、肉用種にも当然のこと繁殖用の母牛がいるわけで、 それがどのように飼われ仔牛を供給しているのかは私も詳しくは聞いたことはない。 当然、多産となるよう飼育されているのであろう。異常プリオンの蓄積には数年かかるため、 30ヶ月以下の若牛は感染していても検査で発見することは難しいといわれているが、 これはもちろん、検査で見つけにくいというだけであって、100%安全かどうかとは別の問題である。 そのあたりの議論を整理しないままに、 『現時点では屠殺月令で牛肉を区分するのがBSEの危険度を判断する助けとなる』 というような、科学技術で解明しきれていない部分を、都合よく解釈する方向へ進んでいる気がする。 専門分野はそれぞれに進歩しているのに、それを総合して判断する人間の能力は 相変わらず、お寒い状態が続いているようなのである。 以上のように見てくると、一口にアメリカ産牛肉の牛丼と言っても、どのような肉が使われているかを正確に 区分し、かつその危険度を明確に答えられる日本人はいるまい。 吉野家の社長は答えられる?と思うが、その社員は果たしてどうであろうか。 そもそも強欲な人間が、草食獣に共食いをさせるという、反自然の行いをしたために発生したBSE。 煮ても焼いても破壊されない異常プリオン、種の壁を越えて感染する不気味さ、・・・潜伏期間8年から15年 脳がスポンジになる病気について、自分の脳でしっかり考える・・・今の日本人に格好の練習問題ではないか。 ■追記 日本では平成13年9月にBSE発生。その後の混乱と全頭検査体制についてはご承知のことと思う。 1980年代に英国で確認以来、世界に拡大したが、日本への感染はまったく政府農水省の職務怠慢と断言してよい。 在庫肉の買い上げ政策も偽装牛肉や補助金詐欺といった有様で、農水・厚生の失政は、やはり人材がないのであろう。 この先、米国の圧力に屈して、どんな理由をつけて全頭検査を緩和するつもりか、見ものである。 ただし現実には、若牛を含めた全頭検査にこだわるよりも、特定危険部位の除去を徹底させる方が科学的にも妥当 であるのだが・・・これに関しては池田正行著『食のリスクを問いなおす』(ちくま新書)などを参照されたい。 池田氏は在英経験2年の神経内科医であり、医学的な情報を詳しく述べるとともに、過去のO-157カイワレ騒動や、 所沢ダイオキシン風評被害などの事例からくみとるべきリスク開示のあり方を示している。 ただBSEに関しては、畜産の現場の問題が欠けている印象があるが、これは別の専門家が書かねばならないことであろう。 |